なぜdYdXはレイヤー2に移行するのか
これまでのレッスンで、dYdXにはL1とL2が存在し、それぞれにどのような特徴があるのかを学んできました。
実は、将来的にdYdXはL1を閉鎖し、L2のみになることを目指しています。
本レッスンでは、L2に完全に移行する理由を元にdYdXの今後のビジョンに触れていきます。
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L2がもたらす恩恵
イーサリアムは1秒間に約15件のトランザクションを処理できますが、これはDeFiの発展を支えるには十分ではありません。
過去にDEXを利用してきたトレーダーは、イーサリアムのガス代により非常に高い手数料を払う必要がありました。
しかし、L2技術の発展によりdYdXの取引手数料は中央集権型取引所と同程度となり、トレーダーに使いやすいものとなっています。
もちろん手数料だけが全てではありません。
StarkWareのStarkExは、dYdXでのトレード体験をあらゆる面で改善しています。
L2がもたらす恩恵について、具体的にみていきましょう。
手数料の削減
L2が提供するスケーラビリティの向上により、取引手数料の削減をもたらしています。
ここで最も重要なポイントは、ユーザーが取引中にガス代を支払う必要がないことです。
前回のレッスン内容の確認になりますが、いちいち取引をブロックチェーンに書き込まないため、ガス代が発生しないのでした。
最低取引金額の引き下げ
L2により、取引手数料が大幅に安くなったため、最小取引サイズを縮小することができるようになりました。
これによりdYdXでは、トレーダーがより少ない資金で取引できるようになったのです。
クロスマージン取引
クロスマージン取引とは、1つの証拠金取引口座で複数の取引ペアを同時に取引することです。
クロスマージン取引が可能になったことで、取引ペアごとに証拠金を準備する必要がなくなるため、複数のペアを取引する際の資金効率を向上させた取引環境の構築に成功しています。
dYdXではUSDCが担保となるため、L2ではUSDCさえ準備すれば様々な取引ペアを同時に取引できるのです。
取引ペアの増加
クロスマージン取引とスケーラビリティの向上により、dYdXではより多くの取引ペアを開設することができています。
アルファ版では、BTC-USD、ETH-USD、LINK-USDの永久先物取引を利用可能でしたが、順次取引ペアが増加しています。
取引ペアが増加することによって取引量も増え、それに耐えうる処理能力が必要になるので、L2によるスケーラビリティの向上があってこそ可能となっていると言えます。
トレード決済の速さ
L2とdYdXのオフチェーンマッチングを組み合わせることにより、取引を即座に実行することが可能となっています。
取引所の抱える問題として、相場のボラティリティが高まっている際に、取引量の多さにより注文が通らないという問題が発生することがあります。
特にDEXでのL1取引であれば、トランザクションが通らず希望の価格で取引できないことがあるのです。
しかし、L2 dYdXでは、トレード決済が迅速であるため、そのような問題を解決できています。
L2のおかげで、中央集権型取引所での取引に匹敵する速さをDEXで実現できているというわけです。
プライスオラクル
ブロックチェーンにおけるオラクルとは、スマートコントラクトに外部の情報を提供するサービスのことで、ブロックチェーンと外の世界をつなぐ役割を果たしています。
dYdXでの各トークン価格はSTARK互換の署名を使用したオラクルによって検証され、署名されるとすぐにスマートコントラクトによって価格が反映されます。
これにより、オラクルの価格更新の待ち時間は、イーサリアムのL1ブロックチェーンで数分、StarkWareのL2ネットワークでは数秒と大幅に短縮することができているのです。
高レバレッジ取引
オラクルの性能向上により、清算をより迅速に行うことが可能になっています。
清算を高い精度で行えることは、トレードで損失が出たときに、自己資金のみならず借りていた資金まで損失が出てしまい借りた資金が返せないという状況を防ぐことにつながります。
そのため、より高いレバレッジでの取引の提供には重要なことなのです。
このおかげで、dYdXでは一部の先物永久市場において、最大25倍の高レバレッジでの取引が可能になっているのです。
プライバシーセキュリティの向上
ZK-Rollupでは、すべての取引の詳細がオンチェーンで公開されるわけではなく、残高の変化のみが公開されます。
そのため、トレーダーは独自のトレード戦略が公開されることはなく、またトレードが監視される心配もありません。
これらの点から、プライバシーやセキュリティを大幅に強化することができていると言えるでしょう。
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L2が可能にするdYdXのビジョン
以上で見てきたように、L2で取引することでトレーダーに多くの恩恵があることがわかったのではないでしょうか。
中央集権型取引所で取引するようなスピード感を保ちながら、DEXであるという利点も享受できるというのは、dYdXの創設者Antonio Juliano氏が思い描いていた「dYdXはDEXのメリットをそのままに複雑な取引を可能にする」ということにつながっているのです。
L2のスケーラビリティの向上により、主要な信用取引機能に加えてオプションやデリバティブなど、より高度な取引機能を提供することもできています。
一方、L1 dYdXではガス代や取引処理速度がイーサリアムに依存しているため、高度な取引に向いていません。
このように、dYdXが目指している取引所像はL1では実現できず、L2によってのみ実現可能なため、将来的にはL1を閉鎖しL2のみを拡大していくという方針になっているわけです。
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