金融包摂とは?
金融包摂(Financial Inclusion)とは、世界銀行による定義によると「すべての人々が経済活動に参加できるよう、また経済的に不安定な状況を軽減するために、必要とされる金融サービスにアクセスできそれを利用できる状況のこと」とされています。
金融包摂は、一般的に聞き馴染みがない言葉だと思います。
なぜなら、先進国に住む人々の多くが銀行口座を保有しており、決済やローン、証券取引など様々な金融サービスに日常的にアクセスできるからです。
しかし、世界には未だに銀行口座を保有していない人々が多く存在しています。
世界銀行の統計では、これらUnbankedと称される人々の人口はおよそ17億人に上ると言われており、多くの人が十分な金融サービスにアクセスできていません。
これらの人々は、主に経済的発展の乏しい途上国や、テロや紛争、環境破壊などを原因として発生した難民地域で生活しています。
一般的にそのような環境下では、金融の恩恵を十分に享受することは容易ではないのです。
このような状況を打開すべく、金融包摂というムーブメントは世界的に注目され、昨今強く加熱してきています。
本質的には貧困や不平等の解決を目指す運動であるため、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)などとも深く関係しています。
ただし一口に金融包摂と言っても様々な形態があります。
例えば、モバイルアプリを通した決済手段の提供や、貧困層に対して少額の融資を行うマイクロファイナンスなどが典型的な金融包摂の事例です。
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金融包摂を阻む既存金融システムの問題点
なぜ既存の金融システムは、これだけ多くの人々を金融システムから排除し続けているのでしょうか?
根本的な原因について考えてみましょう。
端的に言えば、その理由は貧しい地域において銀行が利益を出すことが非常に難しいからです。
貧困層向けの預金や与信などの銀行サービスは、扱う金額の少なさから利益を生み出しづらく、最低限の運用コストをカバーすることが難しいとされています。
加えて、銀行口座を作成するためには個々人の身元を証明する情報が必要ですが、そもそも身分証明書すら持たない人々も多く存在しています。
これは難民地域でよく見られる問題です。
個人情報がなければ信用履歴を作成することはできず、銀行は与信業務を通して利益を出すことができません。
よって、貧困地域における銀行サービスは十分に発展せず、そのような地域に住む人々は金融システムから除外され続け、貧困のサイクルから抜け出せずにいるのです。
近年、フィンテックなどの新たな技術の活用によって、少しずつ状況は改善し始めています。
モバイルアプリやAIなどの技術を駆使し、銀行口座をもっていない個人への預金・送金機会の提供や、新興企業への融資などといった解決策が提案および実行されています。
ただし、そのような既存テクノロジーの介入でも効果は十分とはいえず、未だ多くの改善余地が残されていることも事実です。
最近ではブロックチェーンを使った信用履歴データベースや与信市場の構築などの応用例が登場しています。
実はこのようなアプローチは、まさに本レッスンで学習するCeloが提案するソリューションと深く結びついています。
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イーサリアムとDeFiエコシステムの発展
金融包摂というビジョンを掲げているCeloは、今後多くの金融サービスを抱えるプラットフォームになると予想されます。
そこでCeloについて学ぶ前に、既に最も大きな金融ブロックチェーンエコシステムを築いているイーサリアムについて学んでおきましょう。
イーサリアムはCeloと同様のパブリックチェーンであり、巨大なDeFiプラットフォームとなっています。
DEXやレンディング、ステーブルコイン、デリバティブなど各金融分野で急速に開発が進んでおり、様々な革新的サービスが登場しています。
例えば、DEXのUniswapやレンディングプラットフォームのCompoundとAave、ステーブルコインDAIを発行するMakerDAOなど数々の主要なDeFiサービスが存在しています。
イーサリアム上の金融サービス群は、インターネットへのアクセスと仮想通貨を持っている人であれば誰でも自由に利用できます。
その意味で、DeFiは金融包摂を体現していると言えるでしょう。
そしてスマートコントラクトは、一度デプロイすれば不可変なプロトコルとして自律的に稼働し続けます。
よって、運用コストはほとんどかかりません。
さらにはトラストレスという言葉があるように、文字通り運営主体を信用する必要性が限りなく低いまま利用可能である点も特徴です。
DeFiサービスはよりオープンで安心な運用コストも低い金融サービスとして、従来の金融サービスを代替する可能性を秘めているのです。
Celoは、DeFiエコシステムを独自に再構築することで金融包摂を推し進めようとしています。
イーサリアムはCeloにおける金融包摂ように特定のビジョンを掲げているわけではありませんが、金融分野において両者は競合関係にあると言えるでしょう。
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