Ripple社の概要
Ripple社は2012年にサンフランシスコで創業されたブロックチェーン技術を開発する会社です。2020年9月時点で、全世界に10拠点(日本におけるSBI Holdingsとの合弁会社を含む)、450人以上の従業員がいます。
Ripple社のビジョンは、一言で表すと「価値のインターネット(Internet of Value)」の実現です。
これが意味するところは、「インターネットによって誰でも瞬時にかつほとんど無料でデータを送れるようになったように、誰でも価値(お金)を瞬時にほとんど無料で送れるような世界を実現する」ということです。
世界のグローバリゼーションが進むにつれて、重要なインフラは標準化の波を経てきました。
物流においてはコンテナの発明により、モノの移動における摩擦が減少したことで、国際貿易が飛躍的に成長しています。
さらに、インターネットによってデータのやりとりも標準化され、摩擦が減少したことで通信量が大きくなり、低コストのデータ通信システムを基盤として、様々なビジネスモデルが誕生しました。
そして、次の大きな標準化の波は「価値のやりとり」であるとRipple社は考えているのです。
「価値のやりとり」における標準化が進み、データを送るように瞬時に低コストで価値も送れるようになれば、送金額も飛躍的に増加し、低コストの価値のやりとりを基盤として、新たなビジネスモデルが生まれることが期待できるでしょう。
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RippleNetとは
Ripple社は、「価値のインターネット」を実現するための戦略として、2つの大きな柱を構築しています。
1つ目が、本レッスンで説明をする金融機関向けの「RippleNet」です。
もう1つは、レッスン⑤で学習する開発者向けのRippleXというイニシアチブになります。
RippleNetは、国際送金を効率的に決済するための金融機関向けのエンタープライズソフトウェアです。
金融機関は従来のSWIFTやカスタムAPIではなく、RippleNetが提供する標準APIを活用することで、ネットワーク上のどの金融機関とも瞬時にリアルタイム決済をすることが可能となります。
現在、RippleNetを採用する金融機関は45か国300金融機関以上に及び、70の国でのペイアウトが可能です。
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RippleNetの基本構造と基盤技術
RippleNetでは、送金側の金融機関と受取側の金融機関がRippleNetの共通APIでダイレクトに繋がり、リアルタイムで決済をすることが可能です。
受取側の金融機関は銀行口座、現金、ウォレットなどの様々な支払い手段を提供します。
さらにこの仕組みを掘り下げてみていきましょう。
RippleNetには双方向のメッセージング機能があり、これによって送金の個人情報やコンプライアンス関係のデータ、取引の詳細などをリアルタイムかつ双方向に送り、お互いに検証することができます。
SWIFTでは一方向のメッセージングであるがゆえに、逐次的で非同期の情報連携となっています。
RippleNetでは、双方向かつリアルタイムで送金側と受取側が常に同じデータをやりとりすることができるのです。
さらに、インターレジャープロトコルという異なるレジャー(台帳)間の価値のやりとりの共通プロトコルを基盤とした、一元的な決済(アトミック・セトルメント)を可能とします。
全ての必要な情報や条件が検証された上で決済が実行されるため、決済自体は秒単位で終了します。
これらの機能に加えて、暗号資産XRPをブリッジ通貨として活用することで流動性の問題を解決する「On-Demand Liquidity(ODL)」というサービスも提供しています。
ODLの詳細は次回のレッスンで学習します。
このように、従来はSWIFTへの「信頼」に基づいて機能していた国際送金が、ピア・ツー・ピア(金融機関同士)の分散型ネットワークであるRippleNetによって、第三者を信頼することなく確実に実行することが可能になるのです。
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RippleNetの標準送金ルールについて
RippleNetのもう1つの特徴は、ネットワーク共通の「ルールブック」があることです。これまで金融機関同士が送金のための商業契約をする際には、両者間での細かい送金ルールについて協議し、契約書に落とすために膨大な時間と労力がかかっていました。
この無駄を取り除くために、RippleNetにメンバーとして加入する際の共通ルールを設定することで、金融機関同士の接続が劇的に簡素化されます。
この簡素化により、金融機関同士の接続が加速しネットワークが拡大することが期待できるのです。
また、共通のルールを用いることで一貫性のある送金体験を実現することを目指しています。
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金融機関による導入実例
実際にRippleNetの導入事例として、日本最大の国際送金業者であるSBI Remitの取り組みをみていきます。
SBI Remitは、日本に住む外国人労働者を対象にした国際送金サービスを提供しています。
RippleNetを活用してタイおよびベトナムの金融機関と提携することにより、両国でのリアルタイム送金を実現しました。
SBI Remitは速くてかつ銀行よりも数分の1のコストで送金を実現したことにより、現在日本で急増する外国人労働者のニーズに応えています。
もう1つの日本での事例としてMoneyTapがあげられます。
日本における銀行間の国内送金、全銀ネットと呼ばれる従来のシステムを通して行われます。
しかしながら、国際送金はSWIFTが使われており、国内外の送金システムは分断されているのです。
MoneyTapは、国内送金と国際送金を一元化したプラットフォームを運営しています。
同社のプラットフォームではRippleNetが導入され、分散型の送金の仕組みを金融機関に提供しています。
このプラットフォームを通して、最近は〇〇ペイのような民間の決済サービスへチャージ連携できるようになりました。
その他にも海外事例として、次のようなものがあげられます。
- 米国アメリカンエキスプレスのグループ会社であるFX International Paymentsが、中小企業(SME)向けのサプライヤー支払いのためにRippleNetを活用
- 韓国の送金業者Crossが、韓国在住の外国人労働者を対象にRippleNetを活用した送金サービスを提供
- ベトナムの銀行TPBankが、海外移民からベトナムへの送金を受け取り、最終受取人に届けるペイアウトパートナーとしてRippleNetを活用
RippleNetの革新的な国際送金ソリューションによって、送金コストは大幅に低下し、かつユーザー体験も飛躍的に向上します。
これにより、送金のエンドユーザー(その多くがこれまでまともに金融サービスにアクセスすることが難しかった低所得者層)の生活に大きなインパクトを与えているのです。
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